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2007-07-22

変なおじさん――ふたたび岩崎勝平

 給料をもらったので、美術館に岩崎勝平の画集を買いに行った。岩崎について書かれた本もあったので見ていると、この画家は戦前に大変注目される作品を描きながらどういうわけか画壇から疎まれ、世に出るというところまではいかなかったようだ。だからこれだけすごい作品を描いているのにあまり知られていないのだろう。

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 戦後はこの町でぶらぶらしながらスケッチの類をたくさん残したものの、本格的な作品を描かないまま50代で亡くなった。とくに女性を多く描いているが、町できれいな女性を見つけると、絵を描かせてくれと自宅までついていったという。今なら完全にストーカーだが、当時もこの町では主に迷惑おじさんとして知られていたらしい。

 その辺で見かける変なおじさんが、実は偉い人だったといった例はよくある。昔新聞配達をしていたころ、店にふらっと白髪でやせぎすのなおじさんが入ってきた。度のきついメガネをかけ、話し方がひじょうにせわしない感じだった。「ぼくが載っている新聞が欲しい」と言うので、「そんな新聞はない」と思いながらも、ちょうど到着したばかりの夕刊を一部渡した。すると、その場で書評欄を広げて、「ほら僕の書いた本が一位になっている」とその週売れた本のランキングを示した。『韓国の悲劇』という本だった。「ほんとかよおっさん」と店員一同は思ったが、ずっと後でそれが小室直樹というカリスマ的な社会学者であることを知った。ご近所だったのだ。本が売れたことについてはかなり自慢げだったが、オレは偉いんだという態度は全くなかった。

 画家とか学者といった人種は、社会的な立場を離れればみんな変なおじさんなのかも知れない。私もしばしば昼間からあり得ないような場所を歩いていたりすることがあるが、いままでは変なお兄さんのつもりだったから気にしなかった。しかし、気が付けば私ももう変なおじさんの予備軍、いや変なおじさんそのものの年になってしまっている。私の場合、実は偉い人だったというオチがなく、本当に変なおじさんだったということになりそうだが……。そういえば、山で遭難したまま哲学者の言葉について瞑想している人や、道なき道を尋ねて崖を登ったり下りたりしている人など、このブログに関わりのある人は変なおじさんやお兄さんが多い。また、きわめつけは、知らない人からは「仏像研究家」だと思われているキリスト教神学者、私の恩師である。

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コメント

桶川君の周辺には変なヒトが一杯ですね。
カリメロが大物になれないのはフツーのヒトだからなんだ!と合点がいきました。

投稿: カリメロ | 2007-07-23 09:51

類は友を呼ぶのでしょうか。桶川さんの周囲には変な人がいるものですね。しかし、小室直樹さん、かなり強烈なおじさんですね。嫌いじゃないです、ああいう人は。

僕は今日、子どもが折り紙で作ってくれた腕時計をしたまま大学に行って授業をしてしまいました。授業中に時間を見ようとして、初めて気がつきました。

保育科の学生たちは好奇心満々で、アレコレ訊いてきましたが、別に意味があってのことではなく、朝、子どもが巻いてくれたのでそのまま出勤しただけのことです。

玉子をゆでるかわりに懐中時計をゆでたニュートンほどではないにしろ、自分でも、浮世を少し離れたところにいるのかもしれないと感じました。

こんなんで、学生に倫理を教えてよいのでしょうか。いや、こんなメタな世界の住人だからこそ、教えられるのかも。

投稿: 白頭庵 | 2007-07-23 22:16

カリメロさんがフツーのヒトですって!
まあ、ある意味ではね。
つまり、私のまわりに余りに非常識な連中が多いので、その中では常識をそなえた数少ない(いやほとんど唯一の)人間かも知れません。
だけどねえ……。

白頭庵氏、それはすばらしい。
そういうことはやろうと思ってできることではありませんよ。
もちろん、そういう人だから倫理を教えられるのだと信じたい。

投稿: 桶川利夫 | 2007-07-25 00:09

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