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2008-02-21

月夜の濱邊

 詩はあまり読まない方だ。しかし、中原中也は若い頃よく読んだ。よく口ずさんだというべきか。たとえば一人で一日中勉強をしていると、なぜかこんな歌が心にしみる。

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが

   月に向つてそれは抛れず
   浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?

小六の娘がこれを選んだ。卒業前にクラス全員で詩を読む会が催されることになり、何の詩を読むのかみんなで決めるので家にある詩集をもってこいということだったらしい。翌日実際に詩集を持ってきたのは娘だけで、それが「中原中也詩集」(角川文庫)と「宮沢賢治詩集」(岩波文庫)だった。その中で何にするかとクラスメートたちから聞かれて選んだのがこの「月夜の濱邊」であった。

 わが娘ながらよくぞ選んだ。小学校を卒業する子どもたちが声を合わせて朗読する時、その言葉が「月夜の濱邊」であることを想像すると、この世を生きていることもちょっとばかり楽しくなってくる。

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コメント

本当に、よくぞ選んだものですね。
桶川さんのお嬢さん、素晴らしいです。

一緒にアップされた月の写真も、中也の詩によく映えますね。名古屋でも、今夜はとてもいい月です。

投稿: 白頭庵 | 2008-02-21 23:31

白頭庵さんの弾く「月光」に掛けてるんですが、この写真は実は昨年のものですcoldsweats01

投稿: 桶川利夫 | 2008-02-22 16:07

桶川君のお嬢さんはもう中学生なの。。。
ところで、詩集はよくぞ選んだ、という感じでもありますが、そもそも家の本棚に詩集が入っているあたりが我が家とは大きく異なります。
詩集を常に手に取れる環境であることに感嘆してしまう私、レベル低すぎかしら?
我が家の本棚には画集すら入ってません。

投稿: カリメロ | 2008-02-22 21:12

いやいや、私の家には詩集は少なくて、他には三好達治と吉本隆明と、あとは小田和正(笑)くらいです。

しかし、なんで画集がないの?
ああ、T京に置いてきたということか…。

投稿: 桶川利夫 | 2008-02-22 23:34

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