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2008-07-23

キリスト教色?

 先日は朝から家族で映画館へ行き『崖の上のポニョ』を見た。ロードショー3日目で映画を見るのは初めてのことだと思う。宮崎さんの映画は、前作も前々作も母子だけで見に行かせて自分は後でビデオで見たというのに、今回は家族にくっついていち早く出かけた。いつもと違って超大作感がないのが気楽にさせたのかも知れない。

 気楽に出かけたものの内容はすばらしかった。妻が人に感想を聞かれたらどうしようと言っていたので、「宮崎駿最高傑作」でいいんじゃないかと答えた。実際少なくとも私の中では、これまでのベストにしてもよいよいくらいの出来だった。冒頭から終わりまで、一瞬たりとも説明のために浪費されるようなシーンはない。全シーが今まさにその動きのために存在していた。しかも、画面全体がすみずみに至るまで常に動いている。これは冒頭から聴衆の目を釘付けにした。そうだ、世界というものは微細な分子に至るまで絶えず運動し続けているではないか。昔手塚治虫がディズニーを見て感動した時はこんな感じだったのかも知れない。宮崎さん、『もののけ姫』でやめなくて本当によかった。

 ここ数年の作品は設定が緻密な分、『カリオストロの城』や『パンダコパンダ』の破天荒な面白さにはやや欠ける面があった。しかし、今回はいきなり最初から目を見張る場面の連続だった。しぶきをあげる波、揺れる木々、人や車が疾走する道だけでなく、そもそのそれらの運動の舞台となる島や海や地球全体が何かぐにゃぐにゃと揺れ動くようで、次に何が起こるのかが本当に予想もつかない。何というか痛快そのものの映画だった。アニメというものの本質を見せられる思いだった。

 これまでにジブリ美術館へも何度か行っているが、あそこで上映されている映画が非常にクォリティーが高く、実験的で面白いのだが、それらのうちのいくつかが今回の作品のための習作になっていることに気づいた。

 ところで、この映画の企画意図について宮崎さんは、「アンデルセンの『人魚姫』を今日の日本に舞台を移し、キリスト教色を払拭して、幼い子供たちの愛と冒険を描く」(パンフレット)と述べている。確かにこのストーリーには、『人魚姫』を下敷きにしていると思われるモチーフがいくつもある。ただ、ポニョは人魚姫のように愛する人に誤解されたり、犠牲になったりしない。そして、その点が「キリスト教色を払拭」という意味なのだろう。

 ここには、アンデルセンの物語は本当の意味でキリスト教的なのだろうかという問題が一つある。また、払拭されたものは正確には何かという問題もある。そして、それを払拭することでこの作品が躍動感を得ているとすれば、私が感動したものとは何かという問題がさらにある。宮崎駿はよくアニミズムやエコロジーと結びつけて語られることが多い作家だが、思想的に言ってキリスト教的なものとどのような関係にあるのだろう。やはり対立なのか? まあ、そういうことが少しひっかかるのだが、とにかく今は久しぶりに興奮させられる映画を見たというだけで胸がいっぱいだ。

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